
take it easy,go with the flow. #002
「自分との約束」とは何か?
現在発売中のキネマ旬報に昨年の英国映画界事情について書いたが、そのなかで、英国政府の大胆な予算削減策に触れた。
これは私のブログにも書いたが、英国では戦後、時計の振り子のように二大政党が政権を交替し、その度に真逆の政策が実行されてきた。昨年、イギリスは13年に及ぶ労働党政権に終止符を打ち、保守党のデヴィッド・キャメロン首相と自由民主党のニック・クレッグ副首相による連立政権が発足した。この新政府がまず着手したのは財政緊縮。英国の累積赤字は1兆1,000億ポンド(146兆8,000億円)で、これは日本の800兆円を超えるといわれる累積赤字の5分の1なのだが、様々な公約を掲げていた自由民主党も、まずは財政基盤を安定させないと話にならないというわけで、歩調を合わせ、早速、緊急予算を発表した。
英国政府の「有言実行」力には目を見張るものがあり、国民も今回の予算削減については概ね致し方ないと受け止めている。政府が過保護になると、その制度を不正に利用する人が出てくることに誰もが気づいているのだ。反対デモを行ったのは、これまで殆ど学費を払わずに済んでいて、これからはそうもいかなくなるイギリス国籍の学生ぐらい。
イギリスでこうした大胆な政策転換が可能なのは、政治家が最初に事の真意を明らかにし、疑問や批判に対して説明できる論述力を備えているからだと思う。そもそも政治家の本領とは言葉で民衆を感動させること。そういう点では音楽でファンを熱狂させるロック・ミュージシャンと同じ。トニー・ブレア元首相が学生時代、バンドをやっていたというのも頷ける。筆者もイギリスに来て以来、国会中継や選挙前の党首の公開討論を見ながら、何度もカタルシスを味わった。これを観る(さらにそれを理解する)ことができただけでも、イギリスに来た価値があると思っている。残念ながら日本では一度も体験したことがなかった。論述力でいえば、日本の政治家はイギリスの政治家の足下にも及ばないだろう。というか、そもそも国民全体の表現力のレベルが違う。もちろん日本人にはイギリス人に負けない能力を持ち合わせている。真面目で、きめ細やかで、配慮深く、従順。統率者は周囲に支えられている部分が大きい。逆にイギリスは他民族国家だから、強いリーダーシップを発揮できる人が上に立たなければ、簡単にバラバラになってしまう。
イギリスの政治家だって人間だから、間違いも犯すし、スキャンダルもある。だけど、彼らにこの国を任せてもいいと国民が思えるのは、その有言実行力において彼らを信頼しているからだ。政策内容や道義的立場はさておき、フランスのサルコジ大統領が国内で評価されているのも同じ理由からだろう。
物事を実現するには責任と苦労を伴う。逆に言えば、何かやりたいことやそうなりたいと思う状況があったら、それを口にすることで達成できる。私も今、フランス語を学んでいるが、まだそんなレベルではないのに、人から聞かれたら思い切って、「フランス映画を字幕なしで鑑賞できるようになるのが目標です」なんて言っている。そう言うこと自体、勇気がいる。でも、言った手前、後はそうなるよう努力しなければならない。前回ご紹介したサー・リチャード・ブランソンは、人に言ったことを全て実行して今の地位を築いた。
自分との約束を守ることで、人生は豊かになっていく。
RICA
在英11年。ヴァージン・アトランティック航空のサイトに『RICAのロンドン日記 私の好きなイギリス』と題してブログを執筆中。今月20日発売のキネマ旬報『英国王のスピーチ』特集に「映画はこれまでイギリス王室をどのように描いてきたか」を寄稿。
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